⑤学力の二つの側面をどう伸ばすのか?

⑤学力の二つの側面をどう伸ばすのか?

 ところで、勉強の内容を本質的に理解するためには、どうしたら良いのでしょうか?

 具体的な例を元に考えていきましょう。

 学力には二つの側面があり、一つは算数や数学での「計算や公式の暗記」といった「繰り返し練習することで身につくもの」で、これが「基礎学力」とされるものです。

 訓練を重ねることで上達する学力でもあり、ある程度強制して訓練させないと、身につけられない性質のものです。

 そして、もう一つは、訓練だけでは習得出来ない「自分で考える力」、つまり「思考力」があります。

 「自分なりに理解すること」が必要で、計算や暗記力の基礎学力を組み合わせて複合的に考えることが要求されます。

 集団型進学塾の中には、この「思考力」を要する問題であっても、暗記させて解かせようとしている場合があります。

 「基礎学力」育成のためなら、集団型進学塾に「叩き込まれる」ことによっても基礎学力を伸ばすこともできるのですが、問題なのは、「思考力を要する問題」に対しても、「生徒が自分で考える」ことを伸ばそうとしないで、「暗記型」で叩き込もうとすることです。

 そういった形で叩き込まれても、なんとかやり遂げてしまう生徒もまれにいますが、そういった形で解く習慣をつけてしまうと、成長するにつれ、「自分で考える力」が決定的に欠けてしまうのです。

 成長過程にある段階では、「基礎学力」にしても成長が早い生徒・成長が遅い生徒と個人差が大きく、個人の成長度次第で、「理解できる力」に差が出てきます。

 大人でも人により持つスキル・個性がまったく違うように、子どももそれぞれの持ち味・資質があり、ある生徒は「ある分野では驚くべき集中力がある」、ある生徒は「手作業が得意……」という具合に、分野・領域ごとに能力に優劣があることは当然のことです。

 そうした前提に立ち返れば、学習塾でも指導するときに、「生徒一人ひとりに合った教え方をする」必要があるといえます。

 「単に受験問題を解くテクニック」を一方的に教える場となっている集団型進学塾の授業では、そうしたきめ細かな対応を行うのは困難なのです。

 集団型進学塾は生徒の「志望校への合格」を目的とするだけに、難問も数多く解かせる訓練を行います。

 当然、その中には深く「考える力」を必要とするものも多くあります。

 訓練として、この手の難問を解くのは、受験対策としては良いのですが、問題なのはその指導方法です。

 「思考力」を要する問題なのに、「暗記型」で叩き込もうとするのです。

 というのも、集団型進学塾で、それぞれ個性の異なる生徒に対し、「考える力」を集団型授業で引き出そうとすることは、指導する教師の相当な指導力を要するからです。

 ですから、どうしても手っ取り早く、指導側の都合で「暗記型」で叩き込もうとしてしまうのです。

 受験対策として難問を大量に解かせる、という教え方がマッチするのは、生徒が難問を解く基礎学力がすでにあって、それだけの発達段階に達している場合だけといえます。

 まだその状況に当てはまらない生徒まで同じトレーニングを強要するから、生徒は「自分で考え、自分なりに理解すること」よりも、とにかく大量の予習課題やテスト問題を目の前に、「理解するよりも答えを出すこと」を急いでしまうのです。

 「考える力」は一朝一夕に身に付けられるものではありません。

 大切なのは、個別の能力を引き伸ばしてくれる、自分にあった学習塾を見つけ、詰込み型学習を推進している塾ではなく、「自分で考える力」を重視した塾かどうか判断した上で、学習塾を選択することです。

 「自分で考える力」は、学力を高め、生涯にわたり持ち味を生かし、人生を切り開いていく「生きる力」に直結する重要なものなのです!


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